コラム

【第1回】制度では人は動かない〜辞めない組織づくりに必要なのは、“仕組み”より“信頼”だった〜

1制度では人は動かない

辞めない組織づくりに必要なのは、“仕組み”より“信頼”だった

こんにちは。経営者支援ネットワーク(KSN)代表の今西英昭です。

この連載では、現場で日々経営と向き合う中小企業の皆さまに、今すぐ役立つ「人材定着」のヒントをお届けしていきます。初回は、KSN理事でもあり、人材育成と組織づくりの実務支援で多くの成果を挙げてきた上田真士さんへのインタビューをもとに、「辞めない組織づくり」の第一歩を考えます。

「制度を整えたのに、なぜ辞める?」

「評価制度を導入したのに、離職が止まらない」「人事制度を整えたのに、社員がついてこない」。
そんな声を、現場でよく耳にします。

上田さんはこう語ります。

「制度が整っていることと、人が定着することは、必ずしも一致しません。
社員が感じているのは、“制度そのもの”よりも“その制度を誰が、どう伝えているか”なのです。」

つまり、どんなに立派な評価制度も、信頼関係がなければ「押し付け」にしかならないのです。

経営者の“思い”を仕組みに乗せられているか?

多くの経営者が、「社員に長く働いてほしい」「力を発揮してほしい」と願っています。
その思いを形にするのが制度であり、仕組みです。

ところが、仕組みだけが先に立ち、思いが伝わらない状態になると、社員は「評価されるために働く」ようになります。そこに“やりがい”や“帰属意識”は育ちにくくなります。

上田さんは、「信頼と仕組みが同時にあるとき、組織は前に進む」と言います。
この“順序とバランス”が、辞めない組織のカギなのです。

会社ごとに“正解”は違う

さらに大切なのは、「他社でうまくいったやり方を、そのまま真似しないこと」。

上田さんはこれまで、建設業・小売業・製造業・医療法人など、さまざまな業種・規模の企業で「外部人事部長」として関わってきましたが、どの会社にも「らしさ」があり、それに合わせた制度設計が必要だと言います。

「経営者の考え方、現場の文化、社員の年齢構成。それぞれに合わせて“どこから手を付けるか”を見極める必要があります。」

まずは“対話”から始めてみませんか?

辞めない組織をつくる第一歩は、難しい制度設計や人事システムの導入ではなく、
「社員の声を聞く」「思いを言葉にする」ことです。

社員の“定着”は、制度や待遇の前に、「この会社にいてもいい」と感じられる空気感から生まれます。

まとめKSN代表理事 今西英昭より

今回、上田さんのお話を改めて伺いながら感じたのは、
「人が辞めない会社」には、必ず**“人を想う経営”の姿勢**があるということです。

制度や仕組みはもちろん大切ですが、
その前に「この会社にいたい」と思える“信頼の土台”があるかどうか。
その違いが、定着にも採用にも、大きく影響します。

私たち経営者支援ネットワークは、
こうした“現場で生まれた実践知”を、これからも伝え続けていきます。
「仕組みの前に信頼」――その言葉を、ぜひ皆さんの経営にも取り入れてみてください。

▶️次回予告

【第2回】
「求人票に応募が来ないのは、なぜ?」
ハローワークやindeed、自社HPの「伝え方」を変えるだけで、応募の反応が変わります。
次回は「採用の入り口」を見直す実践テクニックをお届けします!