コラム

ヒアリング不足は信頼不足 ― 営業の本質は「聞くこと」にある

ヒアリング不足は信頼不足 営業の本質は「聞くこと」にある

住宅営業の現場でよく耳にする言葉に「検討してみます」があります。
なぜお客様は「検討します」で止まってしまうのでしょうか。
その理由の多くは、営業側の「ヒアリング不足」にあります。

  1. 基本情報だけでは不十分

初回面談で聞く情報は、多くの場合以下の通りです。

  • 名前・住所・連絡先
  • 家族構成
  • 希望予算
  • 転居の時期

もちろん、これらは重要です。
しかし、これだけで「お客様がなぜ今、家を建てたいのか」を理解することはできません。
結果として、営業の提案は“表面的”なものに終わってしまい、お客様の心に響かないのです。

  1. 背景を知ることの大切さ

家を建てる理由は人それぞれ。

  • 親と同居を考えている
  • 子どもの進学に合わせたい
  • 趣味の時間を楽しめる空間が欲しい
  • 友人を招いて過ごしたい

こうした「背景情報」こそが、お客様の“本当の理由”です。
この部分を聞き出さない限り、どれだけ立派なプランを提示しても、お客様の心には刺さらないのです。

  1. 営業の役割は「気づきを与えること」

多くの場合、お客様自身も「なぜ今家を建てたいのか」を明確に言葉にできていません。
営業の仕事は、その思いを引き出し、整理し、形にすることです。
お客様の潜在的な気持ちに寄り添いながら「実はこういう理由があったのですね」と言葉にしてあげることが、営業の本当の価値です。

  1. 実際の現場での取り組み

私が関わった工務店では、ヒアリングシートを大幅に見直しました。
従来の基本情報に加えて、以下のような項目を追加したのです。

  • 思い出に残っている家族とのエピソード
  • 将来どんな暮らしをしたいか
  • 休日の過ごし方や趣味

すると提案の仕方が大きく変わりました。
「家族でキャンプが好きだから、ウッドデッキを広めに」
「子どもが勉強しやすいようにリビングに学習スペースを」
具体的な暮らしを想像できる提案ができるようになり、お客様の満足度が格段に上がりました。

     5. 信頼はヒアリングから生まれる

お客様にとって「自分の想いを分かってくれている」という安心感ほど心強いものはありません。
逆に、背景を聞かずに進めると「結局この営業は売りたいだけだ」と思われてしまい、信頼は生まれません。

営業は商品を売る仕事ではなく、「お客様の人生に寄り添う仕事」です。
そのための第一歩がヒアリングなのです。

まとめ

営業の現場で「検討します」が多いのは、ヒアリング不足が原因です。
基本情報だけでなく、お客様の背景にまで踏み込み、その想いを引き出すこと。
それが信頼を築き、契約につながります。

次回は「提案準備不足は“不信感”につながる」についてお伝えします。