コラム

「“何もしないリスク”を伝えることが私の役割」——白岩健介先生インタビュー3回目

「“何もしないリスク”を伝えることが私の役割」——白岩健介先生インタビュー3回目

法律の世界では、知識や制度そのものよりも「どう伝えるか」が結果を大きく左右します。
白岩健介先生が現場で最も大切にしているのは「分かりやすさ」。そして「何もしなかった場合にどんなリスクがあるのか」を経営者に具体的に伝えることです。

今回は、実務家としての視点やこだわりについて詳しく伺いました。

「分かりやすさ」を第一に

白岩先生
「法律用語は難しい言葉が多く、聞くだけで拒否反応を示す方もいます。だからこそ、私は《分かりやすさ》を一番大切にしています。

たとえば事業承継の相談で『株式を信託しましょう』と説明しても、ピンとこない方が多い。そこで私は、カードを3枚並べるイメージでお話しします。

1枚目は『現状』、
2枚目は『何もしなかった場合の未来』、
3枚目は『選択肢を取った場合の未来』。

この3枚を比較しながら説明すると、経営者の方が“腹落ち”してくれるんです。」

「何もしないリスク」を具体的に示す

白岩先生
「経営者の多くは“漠然とリスクがあること”は理解しています。ですが、“それを放置するとどうなるか”を具体的にイメージできていない。

例えば株式の承継問題。

・何もしなければ、親が認知症になった時点で株が動かず、代表者交代すらできない。

・相続が発生すれば、経営に関わらない兄弟姉妹に株式が分散し、経営権を失う。

こうしたシナリオを具体例として提示すると、“これは他人事ではない”と気づいていただけます。大切なのは、“今決断しなければ未来が止まる”という実感を持ってもらうことです。」

面談プロセスの工夫

白岩先生
「私は面談を次の流れで進めています。

1.現状の棚卸し(資産・契約・家族構成など)

2.目指すゴールの明確化(誰に承継するのか、何を守りたいのか)

3.想定されるリスクの提示(何もしない場合の未来)

4.取り得る選択肢の比較(制度・契約・信託)

5.実行計画の整理

こうすることで、経営者ご本人が自分の頭で考え、意思決定できるようになります。私はその“伴走者”として、分かりやすく情報を整理して伝える役割を果たしたいと思っています。」

習慣としての学びとネットワーク

白岩先生
「私自身も、常に学び続けることを心がけています。勉強会やセミナーには積極的に参加し、そこでの出会いから相談や紹介につながることも多いです。

最近では、保険会社や司法書士、行政書士の方とのつながりから、認知症や事業承継に関心のある方をご紹介いただく機会が増えました。専門家同士のネットワークが、経営者にとっての安心につながると実感しています。」

インタビューから見えるポイント

・「分かりやすさ」は経営者の意思決定を促す最大の要素

・「何もしないリスク」を具体的に示すことで未来への行動を後押し

・面談プロセスを体系化することで、経営者が自ら決断できる環境を作る

・学び続ける姿勢と専門家ネットワークが、実務を支える基盤になっている

編集後記】KSN代表 今西英昭

白岩先生が繰り返し強調されていた「何もしないリスク」。これは経営の本質に通じます。赤字を放置すれば倒産につながり、株式を放置すれば承継が止まります。“やらなかった結果”が一番大きなリスクになるのです。

同時に、「分かりやすく伝えることの大切さ」も学びました。経営者が正しい判断をするには、制度や法律を自分の言葉で理解することが不可欠です。だからこそ、専門家が“かみ砕いて伝える”姿勢が未来を左右します。

私たち経営者も「何もしなかったらどうなるか」を常に問いながら、一歩踏み出す勇気を持ちたいと思います。

>次回(最終回)は「読者へのメッセージと今後の展望」。さらに、白岩健介先生の“人となり”についても掘り下げてご紹介します。