コラム

「株式の凍結リスクと、挑戦を続ける生き方」——白岩健介先生インタビュー4回目

件名:「株式の凍結リスクと、挑戦を続ける生き方」——白岩健介先生インタビュー4回目

これまで3回にわたり、白岩健介先生に「認知症と事業承継」「民事信託の需要」「実務家としての視点」について伺ってきました。
最終回となる今回は、経営者へのメッセージ、今後の展望、そして白岩先生の“人となり”について迫ります。

株式の“凍結リスク”を見過ごさない

白岩先生
「経営者の方に一番お伝えしたいのは、《株式の凍結リスク》です。

よくあるのは、二代目が実質的に経営を担っているのに、株式は親の名義のまま、というケース。親が認知症になると株が動かせず、代表者の交代すらできなくなります。相続が発生すれば、経営に関わらない兄弟姉妹に株式が渡り、経営権を失う可能性もある。

これは“会社が止まる”ことを意味します。だからこそ、株式の承継ルートを事前に整えておくことが、事業承継の最重要課題なんです。」

行政との連携で広がる可能性

白岩先生
「私は現在、《一般社団法人日本認知症資産相談士協会》を通じて、行政との連携も進めています。

行政は介護や医療の案内はできても、『お金の困りごと』には踏み込めません。ところが実際には、“銀行からお金を下ろせない”“有価証券を売れない”“保険金を受け取れない”といったお金の問題こそ、家族や経営者を最も困らせます。

協会を相談窓口として広めることで、行政からも安心して紹介できる仕組みを作りたいと思っています。認知症とお金の問題に、法律と金融の両面から対応できる社会的インフラを整えることが目標です。」

弁護士になったきっかけと“戦い”の面白さ

白岩先生
「よく聞かれるのですが、弁護士を目指した理由は“なんとなく”なんです(笑)。大学3年生のとき、就職活動を考える中で『弁護士ってかっこいいな』と思ったのがきっかけでした。

ただ、司法試験を受けるには大学院に進まなければならず、その時点で“挑戦するしかない”と覚悟を決めました。人生は一度きり。やらない後悔より、やって後悔のほうがいい。そう思って挑戦しました。

弁護士になってから感じるのは、《戦いの面白さ》です。民事裁判でも刑事裁判でも、相手がどんなベテラン弁護士であっても、法廷では対等に戦える。数千万円、数億円が動く場面で、自分の主張が通るかどうか。その緊張感とやりがいは、この仕事ならではの魅力です。」

失敗を“経験”に変える力

白岩先生
「もちろん、失敗や後悔もあります。裁判で『もっとこう主張すればよかった』と思うこともあります。ですが私は、失敗を“失敗”とは捉えず、“経験”として次に活かすようにしています。

学生時代も勉強で苦労しましたが、勉強のコツをつかんでから一気に前に進めました。人生は、挑戦して、失敗して、そこから学んでいくものだと思います。

だから私は、悩むべきことは悩むけれど、最終的にはポジティブに捉えるようにしています。よく言われるのは“ポジティブシンキング”ですが、私にとっては自然なスタンスなんです。」

家族と人となり

白岩先生
「プライベートで言えば、妹が一人います。性格的には、よくも悪くも“人を引き寄せるタイプ”かもしれません。子どもたちも同じような雰囲気を持っていて、周りに人が集まってくる感じがあります。

私は特別に“明るく振る舞おう”としているわけではなく、ただ自然体でいるだけです。それでも人とのつながりが広がっていく。もしかしたら、それが私の強みかもしれませんね。」

経営者へのメッセージ

白岩先生
「経営者の皆さんにお伝えしたいのは、『一歩前に踏み出して情報を取りに行ってほしい』ということです。

多くの経営者は、“何もしなかったらどうなるか”を漠然とは分かっていても、具体的にイメージできていません。だからこそ、専門家の話を聞く、制度を調べてみる、契約を見直す。そうした一歩を早めに踏み出していただきたい。

トラブルが起きてからでは遅い。事前準備さえしておけば、会社も家族も守れる。私はそのお手伝いをしていきたいと思っています。」

インタビューから見えるポイント

・株式の凍結は、事業承継における最大のリスク

・行政と連携し、「お金の困りごと」に対応できる窓口を目指す

・人生は一度きり。挑戦し、失敗を経験に変えて次に活かす

・自然体で人を引き寄せる人柄が、ネットワークを広げる力になっている

編集後記】KSN代表 今西英昭

白岩先生のお話を伺い、経営における「事前準備の重要性」と「挑戦する姿勢」の両方を学びました。

株式や資産を放置して認知症を迎えれば、会社は一瞬で止まります。だからこそ早めに動く必要がある。これは全ての経営者に通じるメッセージです。

同時に、先生の「やらない後悔よりやって後悔」「失敗を経験に変える」「自然体で人を引き寄せる」姿勢は、法律家という枠を超えた人間的な魅力だと感じました。

私たち経営者も、恐れず挑戦し、経験を力に変えていく姿勢を持ちたいと思います。