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「借りられる金額」と「安心して返せる金額」は違う

「借りられる金額」と「安心して返せる金額」は違う

「2027年、地域密着工務店はどこへ向かうのか」

第4回は、最初のテーマである「金利・建築費上昇時代の住宅提案」のまとめです。

住宅ローンの事前審査で、お客様が想定していた以上の借入可能額が示されることがあります。

希望する住宅が建てられると喜ばれる一方、その借入可能額を、そのまま住宅予算にしてよいとは限りません。

金融機関が示す「借りられる金額」と、お客様が将来にわたって「安心して返せる金額」は違うからです。

借入可能額は現在の条件をもとに計算される

住宅ローンの借入可能額は、現在の年収、年齢、勤務状況、返済期間、ほかの借入状況などをもとに計算されます。

しかし、住宅ローンの返済は、35年、40年、50年と長期間にわたります。

その間、お客様の収入や家族の状況が変わらないとは限りません。

・出産や育児による休業や時短勤務
・転職や独立による収入の変化
・病気やけがによる休職
・子どもの進学による教育費の増加
・親の介護
・定年後の収入減少

こうした変化が起きても、住宅ローンの返済は続きます。

現在の年収だけで判断せず、将来の変化も考えて住宅予算を決める必要があります。

住宅・教育・老後の三大資金

人生の中で大きなお金が必要になるものとして、次の三つが「人生三大資金」といわれています。

1.住宅資金
2.教育資金
3.老後資金

住宅資金に多くのお金を使えば、教育資金や老後資金に使えるお金が減ります。

住宅ローンの返済ができていても、子どもの進路を制限したり、老後資金を準備できなかったりする可能性があります。

住宅資金には、建物と土地の購入費だけでなく、さまざまな費用が含まれます。

・住宅ローンの利息
・固定資産税
・火災保険、地震保険
・給湯器や住宅設備の交換
・外壁や屋根の修繕
・将来のリフォーム費用

こうした費用まで見込んでおかなければ、住宅を取得した後の家計に余裕がなくなります。

ペアローンで考えたい将来の収入変化

共働き世帯の増加に伴い、夫婦それぞれが住宅ローンを組むペアローンや、収入合算を利用するケースが増えています。

1人で住宅ローンを組むより借入可能額を増やせるため、希望する住宅を建てやすくなります。

一方、夫婦の現在の収入を前提に、借入限度額まで利用することには注意が必要です。

出産や育児によって、どちらかが休業や時短勤務を選ぶことがあります。子どもの成長や親の介護によって、働き方を変える可能性もあります。

少なくとも、どちらかの収入が一時的に減少した場合の家計を確認しておく必要があります。

夫婦の収入が減っても返済を続けられるのか、生活費や教育費を確保できるのかを事前に考えることが大切です。

工務店が確認したい三つの金額

住宅提案では、次の三つの金額を分けて考える必要があります。

1.借りられる金額

金融機関の審査上、借りることができる上限額です。

2.現在返せる金額

現在の収入と支出から見て、毎月返済できる金額です。

3.安心して返せる金額

将来の収入変化、教育費、老後資金、住宅の修繕費を考えても、暮らしに余裕を残せる金額です。

地域密着工務店が重視したいのは、三つ目の「安心して返せる金額」です。

予算を下げることは、希望をあきらめることではない

安心して返せる金額を計算した結果、当初の希望と予算が合わないこともあります。

その場合、単に「この家は建てられません」と伝えるのではなく、優先順位を一緒に整理します。

・希望する地域を少し広げる
・土地の大きさを見直す
・建物面積を調整する
・設備や仕様の優先順位を決める
・将来追加できる設備は後から導入する
・注文住宅以外の選択肢も比較する

お客様が本当に実現したい暮らしが分かれば、限られた予算の中でも提案できることがあります。

予算を下げることは、お客様の希望をすべてあきらめてもらうことではありません。

家族にとって大切なものを残しながら、無理のない形に整えることです。

無理のない提案が長期的な信頼をつくる

住宅会社にとって、建築価格が上がれば売上も増えます。

しかし、お客様の借入可能額に合わせて建物価格を上げる提案は、購入後の暮らしに負担を残す可能性があります。

地域密着工務店は、住宅を引き渡した後も、お客様との関係が続きます。

定期点検、修繕、リフォーム、住み替えなど、長いお付き合いの中で何度も顔を合わせます。

だからこそ、契約時の売上だけを考えず、お客様の将来まで見据えた資金提案が重要です。

「借りられる上限まで勧められた」ではなく、

「自分たちの将来まで考えてもらえた」

と感じていただくことが、完成後の信頼や紹介につながります。

2027年に向けて高めたい資金提案力

第2回から今回まで、住宅価格と金利の上昇、40年・50年ローン、変動金利、人生三大資金について考えてきました。

これからの住宅提案では、建物の価格と毎月返済額だけを示す方法では、お客様の不安に十分応えられません。

必要なのは、

・住宅取得後の維持費
・将来の収入変化
・教育資金と老後資金
・修繕や住み替え
・売却時の住宅ローン残高

まで含めた提案です。

2027年に向けて地域密着工務店に求められるのは、「売れる金額」を考える力から、「安心して暮らせる金額」を提案する力への転換ではないでしょうか。

次回からは、二つ目のテーマ「一生住む家から、人生に合わせる住まいへ」について考えます。