コラム

「セールス力は、セミナーで教えられるものなのか」【監査役 藤本 隆昭】

「セールス力はセミナーで教えられるものなのか」

私のプロフィール

学校卒業後2か月の研修後初めてのセールス活動当初は大阪で9年間、自動車の販売3年間、事務機の販売3年間、この6年間の営業経験のあとセールスマネージャー、管理職の仕事をその後30年間強続けて参りました。

大阪の市場でのセールスが私の原点ですが、33歳の頃当時私は東京電気(現東芝テック)の大阪支店に勤務していましたが支店長から京都の業績が悪く立て直しの為京都営業所に転勤する事になりました。サービスを含め20名くらいのメンバーでしたが思っていた通り活気のない雰囲気でした。赴任して初めて関連会社(冷蔵ショウケース)の先輩支店長にあいさつに行った時、京都の人は地元の人を大切にするから地元の人を前面立てて所長は後ろから応援した方がうまく行くよとアドバイスを貰いました。そのアドバイスを大切にし社内のメンバーとの話し合いと能力強化に注力すると共に京都銀行等地元の銀行支店長との交流を深め京都の老舗とのコンタクトで協力を頂きました。京都での10年、その間営業所は支店になりほっとした頃本社(東京)勤務1年の後名古屋支店転勤になりました。

京都の時とは違って名古屋は成績も良く、営業所も含め100名程の支店なので少しプレッシャーを感じていました。名古屋も京都と同じ歴史のある地域で独自の価値観、文化を持っている所です。初めて挨拶にお伺いしたユーザーさんから支店長は家族どうされるのですかと尋ねられ子供の転校の手続が終われば名古屋に合流しますと答えると安心したようにそれは良かったと言って頂きました。名古屋は8年間いましたが直接営業マンの指導する機会は少なく中間管理職(課長、所長)を通じての取り組みに私の仕事も変わってきました。管理職を通じてユーザーの上層部との信頼感を高めると同時にここでも新しい採用は地元の学校を優先して来たので名古屋育ちの社員が増え今は立派に育ち幹部として活躍しています。一番力を入れたのは課長、所長の能力アップ、数値の裏付けのある昇格目標でした。その後、名古屋支店も支社に昇格し部長も多くなり社員も250名くらいに増え世の中の流れにもついていく事が出来ました。

私の経験から話すと、学校を出て2か月の研修後初めて高価な自動車の販売でしたので夢はありましたが自信があったかというとむしろ不安の方が大きかった。当時モータリゼーションの創生期でマイカーを所有している人は少ない時代です。ユーザーと言えば社長中小企業の専務、お医者さん、工務店等でした。何も知らない若者がそこそこ成績が残せたのは自動車の性能の比較マニュアルとフレッシュな真面目な行動力であったかと思います。それと大阪特有の人情です。次に取り組んだのは事務機、当初は外国製特にアメリカヨーロッパの製品が先行し国産製品は性能面で大分遅れていました。電動計算機、メカ式の金銭登録機の初期の製品でしたがソロバンに替わりスピードアップが実現出来ましたので喜ばれました。この時のセールスポイントは販売力は勿論ですが工場の新製品開発力、技術力が大きかった様に思います。その後パソコン、POSシステムに進化して行きましたが工場の技術力、開発能力が大きく営業面ではシステムの提案能力が重要な要素に変化して来ました。

何か自分の自慢話みたいになってしまいましたが本題は最初に掲げた「セールス力の向上はセミナーで人に教えられるか」という課題についてです。例えば営業マンが本から知識を得ようとして伝説の営業マン「エルマーレターマン」が「人より沢山売りたければ多くの人に会いなさい、しかも有効な人に」この話を聞いてなんだそんな事はあたり前の事で分かっているよと言う人もいれば日頃問題意識を持ち素直な人はなるほど多くの人に会う事から有効な人をピックアップして有効な人を増やして行く必要があるなと感じる人もいます。日頃営業能力向上を真剣に考えている人感受性の強い人は同じ言葉でも受け止め方が強く今後の活動に役立てる事が出来るのです。教える側から言えば信用される経験、分析、理論、事例等多く持つこと。受ける側としては日頃から真剣に仕事に取組み疑問点を明確にしておく事、感受性を高めること話されるすべての事で無くても一点でも自分の活動に役立つ事を受け入れる素直な探究心と感受性話される人への信頼感があれば話が通じます。実務活動ではOJTが一番有効であり成果に結びついて行きますが、本とか1~2時間のセミナーでは聞く側の熱意も大切です。セールス力というのは唯、物品を売る事だけではなく人間性の売り込み、信用力の売り込み、説得力等広い観点から考えると非常に奥深いワザであると考えます。結論として言える事はやはり人に教える事は難しく特に営業活動、営業力の向上を書籍、言葉だけで教える事はなおさら難しい。むしろ教えられる側の向上心、素直さ、感受性が大きなポイントであり聞く側の受け止め方も指導の対象に入れれば良い。