ブログ
ブログ
レジリエンス」と「地球温暖化」に中小企業はどう向き合うべきか
はじめに
いま経営者に起きている「変化」とは何か
第1章 レジリエンスとは何か
モノから人へ、そして社会へ
第2章 強さの正体は「つながり」
個人の力より、関係性が回復力を高める
第3章 地球温暖化は、すでに経営課題
2050年ではなく「いま」が分かれ道
第4章 中小企業に求められる視点
環境問題ではなく、経営リスクとして捉える
第5章 地域密着工務店の実践
レジリエンスを価値に変える経営
<おわりに>
中小企業が未来を支える担い手になる
<代表理事メッセージ>
中小企業こそが、地域と社会のレジリエンスを支える存在である
<はじめに>
― なぜ今、この二つを同時に考えるのか
ここ数年、経営者の多くが同じ感覚を持っているのではないでしょうか。
「何かがおかしい」「これまでの延長では通用しない」。
猛暑、豪雨、豪雪、台風の大型化。
こうした気候の変化は、もはや一過性の異常ではなく、
私たちの暮らしや事業に直接影響する“日常のリスク”になっています。
地球温暖化は、環境意識の高い人だけの話ではありません。
すでに経営の前提条件そのものを揺るがす現実の問題です。
そして今、この状況と深く結びつくキーワードが
「レジリエンス」です。
本コラムでは、
「レジリエンスとは何か」
「地球温暖化をどう捉えるべきか」
そして
「中小企業はどう行動すべきか」
を一本のストーリーとして整理していきます。
<第1章 レジリエンスとは何か>
―「モノ」から「人」、そして「社会」へ
レジリエンスという言葉は、もともと工学用語でした。
モノの世界のレジリエンス
1950年代頃まで、レジリエンスは物理学・材料工学の分野で使われていました。
ゴムやバネのように、押されても元の形に戻る性質。
この「元に戻る力」をレジリエンスと呼んでいたのです。
人の世界のレジリエンス
1970年代になると、心理学の分野で注目されます。
厳しい環境で育っても、困難に直面しても、折れずに成長する人がいる。
そこから、
困難に直面しても、心が回復する力
として使われるようになりました。
社会の世界のレジリエンス
2000年代以降、レジリエンスはさらに広がります。
・地域が災害から立ち直る力
・企業が危機を乗り越える力
・国やインフラが機能を回復する力
今では、
**「社会全体のしなやかさ」**を表す言葉になっています。
整理すると、レジリエンスは
・モノの世界:形が戻る
・人の世界:心が立ち直る
・社会の世界:暮らしが回復する
と進化してきました。
<第2章 「強い人」より「つながっている人」>
現在のレジリエンスを理解するうえで、最も重要な点があります。
それは、
レジリエンスは個人の強さではないということです。
かつては
「メンタルが強い人ほどレジリエンスが高い」
と考えられていました。
しかし、研究や災害対応の現場から分かってきたのは、
一人で耐える人より、
助けを求められる人のほうが回復が早いという事実です。
つまり、レジリエンスの正体は
「個人の力」ではなく「関係性」。
災害時を見ても、
・顔見知りが多い地域
・日頃から声を掛け合っている地域
ほど、混乱が少なく、復旧も早い。
これは「共助」が機能しているからです。
よく使われる例えがあります。
一本の太い柱は、折れれば終わり。
しかし、網目状のネットは、一部が切れても支え合える。
現代のレジリエンスとは、
しなやかなネットワーク型の強さなのです。
<第3章 地球温暖化は「未来の話」ではない>
地球温暖化について語る際、
「2050年カーボンニュートラル」という言葉をよく耳にします。
一見すると、
「まだ時間がある」
「いずれ達成すればいい」
と感じてしまいます。
しかし、重要なのはそこではありません。
地球には、
「これ以上排出してよいCO₂の残り枠」があり、
それを超えると、後戻りできない地点
―ティッピングポイント(後戻りできない地点)を越える可能性があると指摘されています。
一度越えてしまえば、
排出を減らしても異常気象の連鎖は止まりません。
だから重要なのは、
遠い2050年ではなく、
今から2030年までの行動です。
これは理念の話ではなく、
社会と経済の存続に関わる、極めて現実的な問題です。
<第4章 気候変動は中小企業の経営リスクである>
気候変動は、すべての企業活動に影響します。
・災害による操業停止
・エネルギー価格の高騰
・原材料や物流の不安定化
さらに世界では、
「やらないこと」そのものがリスクと見なされる時代に入っています。
中小企業は、大企業と同じ投資はできません。
しかし、同じことをする必要はありません。
地域に根ざし、人との距離が近い。
この特性こそが、中小企業のレジリエンスです。
<第5章 地域密着工務店に学ぶ>
― レジリエンスを実践する経営
ここで、地域密着型工務店の事例を考えてみます。
この工務店は、地球温暖化を
「環境配慮」ではなく
暮らしと命を守る経営課題として捉えています。
高断熱・高気密の住宅は、
快適性のためだけではありません。
停電時でも室温が急激に下がらず、
災害時には人が集まり、助け合える場所になります。
太陽光などの再生可能エネルギーも同じです。
CO₂削減だけでなく、
エネルギー不安への備えになります。
この工務店が重視しているのは、
「正しい情報を、正直に伝えること」。
流行り言葉ではなく、
なぜ今やるべきなのか。
なぜこの性能が必要なのか。
それを丁寧に伝える。
その結果、
価格だけで比較しない顧客との信頼関係が生まれ、
地域の中で「いざという時に頼れる存在」になっています。
これは特別な事例ではありません。
地域に根ざす中小企業だからこそ実践できるレジリエンスです。
<おわりに>
― レジリエンスは特別な施策ではない
レジリエンスとは、
完璧な答えを持つことではありません。
今できることを、今すぐ始める。
正しい情報を学び、共有し、行動する。
そして、人と人とのつながりを大切にする。
地球温暖化への向き合い方は、
そのまま企業の姿勢として残ります。
中小企業は、社会の中で最も現場に近い存在です。
だからこそ、この時代に
レジリエンスの担い手になる力を持っています。
<代表理事メッセージ>
気候変動や災害、社会の急激な変化を前にすると、
「自分一社で何ができるのか」と感じることもあるかもしれません。
しかし、これまで多くの中小企業経営者と向き合ってきて、
私は強く感じています。
中小企業こそが、地域と社会のレジリエンスを支える存在であるということを。
レジリエンスとは、特別な施策や立派な制度ではありません。
日々の経営の中で人を大切にし、
地域とのつながりを守り、
変化から目をそらさず、できることから行動する姿勢そのものです。
地球温暖化への向き合い方も同じです。
完璧な答えを待つ必要はありません。
正しい情報を知り、今できる一歩を踏み出すこと。
その積み重ねが、企業の信頼を高め、次の世代につながっていきます。
私たち一般社団法人経営者支援ネットワークは、
経営者が孤立せず、学び合い、支え合いながら
レジリエンスを「実践できる力」に変えていく場でありたいと考えています。
このコラムが、
自社の経営と、地域との関わりを見つめ直す
小さなきっかけになれば幸いです。
一般社団法人経営者支援ネットワーク
代表理事 今西 英昭